アマチュア無線局 JF9OYU/ライセンスフリー無線局 いしかわJK946 です。いつもブログをお読みいただきまして、心より感謝申し上げます。
さて、ラジオのダイヤルを回していると、突然、英語のニュースやアメリカの音楽が聞こえてくることがあります。日本の民放ラジオともNHKとも違う、どこか海外の空気をまとった放送。それが、在日米軍向けのラジオ放送として知られるAFNです。AFNは「American Forces Network」の略称で、日本語では「米軍放送網」と訳されます。かつてはFEN、つまり「Far East Network」の名前で親しまれており、戦後の日本で洋楽や英語に触れる貴重な窓口でもありました。現在でも東京、三沢、岩国、佐世保、沖縄に放送拠点があり、基地関係者だけでなく、日本のラジオファン、BCLファン、英語学習者にも知られた存在です。この記事では、AFNとはどのような放送なのか、その歴史、FEN時代に日本人へ与えた影響、そして現在の日本国内AFN各局のうち、前編ではAFN TokyoとAFN Misawaの概要を詳しく紹介します。
AFNとは?
AFNは、海外に駐留するアメリカ軍人、軍属、その家族に向けて、ニュース、音楽、スポーツ、生活情報、緊急情報などを届けるための放送ネットワークです。米国防総省系のメディア組織であるDefense Media Activityのもとで運用され、世界各地の米軍基地周辺でラジオやテレビ、インターネット配信を通じて情報を届けています。AFN公式サイトでも、AFNは海外にいる軍関係者とその家族に対して、任務遂行、部隊の安全、生活の質向上に関わる重要情報を届ける役割を持つと説明されています。
AFNの放送内容は、単にアメリカの音楽を流すだけではありません。米軍関係者に向けた指揮官メッセージ、基地イベント、交通情報、天気、災害情報、為替情報、スポーツ、アメリカ本国のニュースなど、海外生活に必要な情報が幅広く含まれます。日本で生活する米軍関係者にとっては、母国の情報に触れるためのメディアであると同時に、日本で安全に暮らすための生活情報源でもあります。たとえば台風への備え、交通ルール、地域イベント、基地周辺の注意事項など、日本の生活に密着した話題も扱われます。
一方で、AFNの電波は基地関係者だけに向けて閉じられているわけではありません。受信できる地域にいれば、一般のラジオでも聞くことができます。そのため日本では、AFNは「米軍関係者向けの放送」でありながら、長年にわたって日本人にも親しまれてきました。特にFEN時代は、洋楽をいち早く聞ける放送、英語を生で学べる放送、海外の雰囲気を感じられる放送として、多くのリスナーに強い印象を残しています。
AFRSからFEN誕生まで
AFNの源流は、第二次世界大戦中の1942年に設立されたAFRS、すなわち「Armed Forces Radio Service」にさかのぼります。AFRSは、戦地や海外基地に派遣されたアメリカ軍兵士に向けて、ニュースや娯楽番組、音楽を届けるために作られた軍向け放送サービスでした。戦場や遠隔地にいる兵士にとって、ラジオから流れる母国のニュースや音楽は、士気を保つうえで大きな役割を果たしました。現在のAFN公式情報でも、AFNの前身としてArmed Forces Radio Serviceが1942年に始まったことが示されています。
第二次世界大戦後、アメリカ軍は日本を含む極東地域に展開し、占領期の日本でも米軍関係者向けの放送が整備されていきました。やがて極東地域の米軍放送ネットワークは「Far East Network」、略してFENと呼ばれるようになります。FENは、米軍関係者向けの放送でありながら、日本の一般リスナーにもよく知られる存在となりました。特にAM放送は夜間に遠くまで届きやすく、基地周辺だけでなく広い地域で受信されることがありました。
FENという名称には、当時の地理的な感覚が表れています。アメリカから見た「Far East」、つまり極東地域に置かれた米軍向け放送網という位置づけです。日本、韓国、フィリピン、沖縄など、アメリカ軍が展開する地域に向けて情報を届けるネットワークとして発展していきました。
戦後日本とFEN
戦後の日本において、FENは少し特別な存在でした。まだ海外情報が今ほど簡単に手に入らなかった時代、FENから流れてくる英語のDJ、アメリカのニュース、最新のポップスやロックは、多くの日本人にとって「海の向こうの文化」そのものでした。日本の民放ラジオやテレビが発展していく一方で、FENは常に少し異質な空気を持ち、アメリカ文化を直接感じられるメディアとして受け止められてきました。
特に音楽面での影響は大きく、FENを通じて洋楽に出会った人は少なくありません。ビートルズ、エルヴィス・プレスリー、カーペンターズ、マイケル・ジャクソン、マドンナなど、時代ごとのアメリカ音楽をリアルタイムで聞ける放送として、FENは洋楽ファンにとって貴重な存在でした。レコード店や雑誌よりも早く、ラジオから新しい音楽が流れてくる。その体験は、現在のストリーミング配信とはまったく違うワクワク感があったはずです。
また、FENは英語学習の教材としても親しまれました。学校の教科書やカセット教材では味わえない、実際の英語のスピード、リズム、言い回しに触れられる放送だったからです。もちろん、最初から内容を聞き取るのは簡単ではありません。それでも、英語の音に慣れる、アメリカのDJの話し方をまねる、ニュースの単語を拾うといった形で、FENは多くの人にとって「生きた英語」の入口になりました。
FENからAFNへの名称変更
日本で長く親しまれてきたFENという名称は、1997年にAFNへと変更されました。これは日本だけの事情ではなく、世界各地に展開していた米軍放送の名称を「American Forces Network」へ統一する流れの中で行われたものです。現在のAFNは、ヨーロッパ、太平洋地域、韓国など、世界各地の米軍関係者へ向けて放送や配信を行うネットワークとして運用されています。
ただ、日本では今でも「FEN」という名前に強い愛着を持つ人が多くいます。特に昭和から平成初期にかけてラジオを聴いていた世代にとって、FENは単なる放送局名ではなく、洋楽、英語、アメリカ文化、そしてBCLの記憶と結びついた言葉です。そのため、正式名称はAFNになっていても、ラジオファンの会話では「昔のFEN」「FEN時代のAFN」といった言い方が今も自然に使われます。
名称が変わっても、AFNの基本的な役割は変わっていません。海外に駐留する米軍関係者へ必要な情報を届けること。そして、その地域で暮らす人々に、アメリカの音楽やニュース、生活情報を届けることです。現在ではラジオだけでなく、AFN Goなどのインターネット配信も加わり、聴取環境は大きく変化しています。
日本人とFEN、洋楽・英語学習・BCL
FENが日本人リスナーに与えた影響を語るうえで欠かせないのが、洋楽、英語学習、そしてBCLです。FENは本来、米軍関係者向けの放送でしたが、実際には多くの日本人がその電波を楽しんできました。東京の810kHzをはじめ、各地のAFN局はAMラジオで受信でき、地域によっては夜間に遠距離受信できることもありました。
洋楽ファンにとってFENは、アメリカの音楽シーンを直接感じられる放送でした。日本のラジオ局が日本語の曲や歌謡曲を中心に放送していた時代、FENではアメリカのヒットチャートやロック、カントリー、R&Bなどが自然に流れていました。曲名やアーティスト名が英語で紹介されるため、聞き取れたときのうれしさもありました。音楽そのものだけでなく、DJのテンポ、ジングル、ニュースの入り方、番組全体の雰囲気まで含めて、FENは「アメリカのラジオ」を体験できる存在でした。
英語学習の面でも、FENは独特の教材でした。教材用にゆっくり読まれる英語ではなく、実際にアメリカ人向けに話される英語がそのまま流れるため、初心者には難しい一方、耳を慣らすには絶好の環境でした。聞き取れない単語が続いても、天気、時間、曲紹介、ニュースの定型表現などは繰り返し出てくるため、少しずつ意味がつかめるようになります。FENを聞き続けたことが、英語への興味や海外文化への関心につながった人も多いでしょう。
BCL、つまり海外放送や遠距離放送を受信して楽しむ趣味の世界でも、FENは身近でありながら奥深い存在でした。AM放送は夜間になると電離層反射によって遠方まで届きやすくなるため、地域や季節、受信環境によっては遠くのAFN局を狙う楽しみがありました。現在のようにインターネットで簡単に世界中のラジオを聞ける時代とは違い、アンテナの向きやラジオの性能、時間帯を工夫しながら電波を探す行為そのものが楽しみでした。
日本国内のAFN各局
現在、日本国内で知られているAFNのラジオ拠点は、東京、三沢、岩国、佐世保、沖縄です。AFN Japanのラジオサービスは、横田基地のAFN Tokyo、三沢基地のAFN Misawa、岩国航空基地のAFN Iwakuni、佐世保基地のAFN Sasebo、沖縄のAFN Okinawaなどで構成されています。
ただし、AFN各局の設備情報については、日本の一般放送局のように総務省の放送局免許情報として整理されているものではありません。これはAFNが日本の民間放送局やNHKとは異なり、在日米軍の運用する放送・通信設備として扱われるためです。そのため、周波数、送信出力、送信地については、AFN関連資料、米軍関係資料、受信情報、送信所訪問記録などを照合して確認する必要があります。以下では、確認できる範囲の情報をもとに紹介します。
AFN Tokyo(Eagle 810)
AFN Tokyoは、日本国内のAFNを代表する放送局です。スタジオ機能は東京都福生市などにまたがる横田飛行場に置かれ、首都圏の米軍関係者に向けて放送を行っています。ラジオでの周波数はAM810kHzで、愛称として「Eagle 810」がよく知られています。AFN関連情報では、AFN Tokyoは横田基地を拠点とし、810kHzで首都圏向けに放送していると紹介されています。
AFN Tokyoの大きな特徴は、送信所が横田基地内ではなく、埼玉県和光市にあることです。和光市の送信所から50kWという大出力で送信されており、首都圏の広い範囲で受信できます。送信所訪問記録でも、AFN Tokyoの送信所は埼玉県和光市南付近にあり、周波数810kHz、空中線電力50kWと紹介されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 局名 | AFN Tokyo |
| 愛称 | Eagle 810 |
| 周波数 | AM 810kHz |
| 送信出力 | 50kW |
| 送信地 | 埼玉県和光市 |
| スタジオ・拠点 | 横田飛行場 |
| 主な対象地域 | 東京都を中心とする首都圏 |
| 主な対象者 | 横田基地など関東周辺の米軍関係者、軍属、家族 |
50kWという出力は、日本のAMラジオ局と比べても大きな部類に入ります。そのため、関東地方では比較的安定して受信でき、夜間には東海地方や北陸地方など、首都圏から離れた地域でも受信報告があります。AM810kHzは周波数としても覚えやすく、ラジオファンにとってAFN Tokyoはもっとも身近なAFN局の一つです。
AFN Tokyoの放送内容は、アメリカの音楽、ニュース、スポーツ、基地関係情報、地域の生活情報などで構成されています。関東には横田基地のほか、在日米軍に関係する施設や関係者も多く、AFN Tokyoはそれらの人々に向けた重要な情報インフラとして機能しています。首都圏で英語のラジオ放送を手軽に聞ける存在でもあり、現在でも英語学習や洋楽目的で聞いている日本人リスナーは少なくありません。
また、AFN TokyoはAFN Goでも聞くことができます。AFN GoはAFNの公式音声配信サービスで、地域ごとのAFN The Eagle局や天気、交通、為替、緊急通知などにアクセスできるサービスとして案内されています。 これにより、AM電波が届かない地域でも、インターネット経由でAFN Tokyoの雰囲気を楽しめるようになりました。
AFN Misawa(The Source 1575)
AFN Misawaは、青森県三沢市の三沢飛行場を拠点とするAFN局です。三沢飛行場はアメリカ空軍と航空自衛隊が使用する重要な基地であり、AFN Misawaはそこに勤務する米軍関係者、軍属、家族に向けて放送を行っています。周波数はAM1575kHzで、AFN関連情報では三沢基地のAFN局として1575kHz、送信出力600Wと紹介されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 局名 | AFN Misawa |
| 愛称 | The Source 1575 |
| 周波数 | AM 1575kHz |
| 送信出力 | 600W |
| 送信地 | 三沢飛行場周辺 |
| スタジオ・拠点 | 三沢飛行場 |
| 主な対象地域 | 青森県三沢市周辺 |
| 主な対象者 | 三沢基地の米軍関係者、軍属、家族 |
AFN Misawaは、AFN Tokyoのような50kW級の大出力局ではありません。送信出力は600Wとされ、主な対象は三沢基地周辺のローカルエリアです。ただし、AM1575kHzという周波数は、かつて岩国や佐世保でもAFNが使用していた周波数であり、BCLや中波DXの世界ではAFN各局を聞き分ける楽しみのある周波数でもありました。
三沢は冬の厳しい気候で知られる地域です。そのためAFN Misawaにとって、天気や道路状況、基地内外の安全情報は特に重要な放送内容になります。米軍関係者にとっては、単なる音楽放送ではなく、雪、交通、訓練、イベント、緊急時の情報を得るための生活インフラです。AFN Misawaの公式・関連情報でも、三沢基地や周辺の米軍関係者に向けて、ニュース、トーク、エンターテインメント、地域情報を提供する局として紹介されています。
AFN Misawaはローカル色の強い局でもあります。地域のイベント、基地内の行事、司令部からのメッセージ、生活上の注意などが放送に盛り込まれ、三沢で暮らす米軍関係者にとって身近な存在となっています。大都市圏を広くカバーするAFN Tokyoとは異なり、AFN Misawaは基地と周辺コミュニティを結ぶ地域密着型のAFN局といえるでしょう。
近年、AFNではFM化の動きも出ています。AFN佐世保がFM93.1MHzでの放送を開始した際、AFN Pacific側は今後、岩国や三沢でもFM放送の導入を検討しているとされています。 もしAFN MisawaでもFM化が実現すれば、基地周辺での受信品質はさらに改善される可能性があります。AM放送には遠くまで届きやすい利点がありますが、建物内や都市部のノイズには弱い面もあります。FM化は音質や屋内受信の改善につながるため、基地関係者にとって実用性の高い変化になるかもしれません。
前編まとめ
AFNは、在日米軍関係者のための放送でありながら、日本のラジオ文化にも長く影響を与えてきた存在です。その源流は第二次世界大戦中のAFRSにあり、戦後日本ではFENとして親しまれました。FENは、洋楽、英語学習、BCLという三つの入口を通じて、多くの日本人に海外文化への扉を開きました。1997年に名称はAFNへ変わりましたが、FEN時代の記憶は今もラジオファンの中に残っています。
現在の日本国内AFN各局のうち、AFN TokyoはAM810kHz・50kWで首都圏を広くカバーする代表的な局であり、AFN MisawaはAM1575kHz・600Wで三沢基地周辺に密着した情報を届ける局です。後編では、AFN Iwakuni、AFN Sasebo、AFN Okinawaの概要を詳しく紹介し、さらにAFNに日本のコールサインが割り当てられない理由、AFN Goアプリでの聴き方、そしてAFN佐世保がFM93.1MHzへ移行した意味について解説します。
本日も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました!
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