アマチュア無線局 JF9OYU/ライセンスフリー無線局 いしかわJK946 です。いつもブログをお読みいただきまして、心より感謝申し上げます。
航空機の運航に欠かせない航空気象情報として、よく知られているのがMETARです。しかし、METARで分かるのは、原則として観測時点における飛行場の気象状態です。空港の天気が急激に変化した場合にはSPECI、今後の気象を確認するときにはTAFが使われます。
METAR、SPECI、TAFは見た目がよく似ていますが、「実況」なのか「予報」なのか、定時に発表されるのか、必要に応じて発表されるのかという点が大きく異なります。この記事では、日本国内の航空気象情報を中心に、TAFとSPECIの概要、読み方、記号や用語、確認方法を詳しく解説します。
METAR・SPECI・TAFの違い
| 種類 | 日本語での位置付け | 内容 | 発表のタイミング |
|---|---|---|---|
| METAR | 定時飛行場実況気象通報式 | 飛行場の現在の気象を定時観測して通報 | 空港ごとに定められた時刻 |
| SPECI | 特別飛行場実況気象通報式 | 運航上重要な気象変化を臨時に観測して通報 | 基準に該当する変化があったとき |
| TAF | 運航用飛行場予報 | 飛行場の今後の風、視程、天気、雲などを予報 | 日本では原則1日4回 |
| TREND | 着陸用飛行場予報 | METARなどに付加される短時間の変化予報 | 対象空港で毎正時・毎30分 |
簡単に表すと、**METARは「定時の現在地実況」、SPECIは「重要な変化が発生したときの臨時実況」、TAFは「これからの飛行場予報」**です。METARを確認した後に天候が急変すれば、次の定時観測を待たずにSPECIが発表される場合があります。また、数時間後に到着する空港の気象を確認するときは、METARだけでなくTAFも確認する必要があります。
TAFとは
TAFは「Terminal Aerodrome Forecast」の略で、日本では「運航用飛行場予報」と呼ばれています。航空機の飛行計画作成、目的空港や代替空港の選定、搭載燃料の見積もりなどに利用される飛行場予報です。
日本のTAFでは、主に次の要素が予報されます。
- 地上の風向、風速、最大瞬間風速
- 卓越視程
- 飛行場周辺の天気
- 雲量、雲底の高さ、積乱雲
- 霧などで空が見えない場合の鉛直視程
- 予報期間中に予想される重要な変化
日本では全国40空港を対象に、原則として00、06、12、18UTCの1日4回発表され、有効期間は30時間です。日本標準時はUTCより9時間進んでいるため、00UTCは日本時間の9時、06UTCは15時、12UTCは21時、18UTCは翌日の3時に相当します。
なお、電文中の発表日時が00、06、12、18UTCより少し前になっていても、誤りではありません。気象庁のTAFは、基準となる発表時刻の55分前から35分前を目安に発信されます。例えば、00UTCを基準とするTAFが、前日の23時05分から23時25分頃に発信されることがあります。
TAFの基本的な並び方
TAFは、おおむね次の順序で記載されます。
TAF 地点略号 発表日時 有効期間 風向風速 視程 天気 雲 変化群
実際のTAFには、必要に応じて修正、訂正、取り消しなどを示す記号も加わります。
TAFの解説用電文
次の電文は、小松飛行場の地点略号「RJNK」を使用した解説用の架空例です。実際に発表されたTAFではありません。
TAF RJNK 241105Z 2412/2518 25012KT 9999 FEW020 SCT040 BECMG 2418/2420 21008KT TEMPO 2421/2503 3000 SHRA BR BKN008 SCT015CB=
この電文は、次のように読みます。
TAF
運航用飛行場予報であることを示します。
RJNK
小松飛行場のICAO4文字地点略号です。
241105Z
24日11時05分UTCに発表されたことを示します。日本時間では24日20時05分です。末尾の「Z」はUTC、いわゆるズールータイムを表します。
2412/2518
予報の有効期間です。24日12時UTCから25日18時UTCまでを意味します。日本時間では24日21時から26日3時までの30時間です。
25012KT
真方位250度から12ノットの風が予想されています。風向は風が吹いてくる方向で表します。
9999
卓越視程が10km以上であることを示します。
FEW020 SCT040
雲底2,000ftにFEW、雲底4,000ftにSCTの雲が予想されています。雲底高度の数字は100ft単位なので、「020」は2,000ft、「040」は4,000ftです。
BECMG 2418/2420 21008KT
24日18時UTCから20時UTCの間に、風向210度、風速8ノットへ変化し、その後は変化後の状態が続く予想です。日本時間では25日3時から5時頃に相当します。
TEMPO 2421/2503 3000 SHRA BR BKN008 SCT015CB
24日21時UTCから25日3時UTCまでの間に、一時的に視程3,000mとなり、しゅう雨ともや、雲底800ftのBKN、雲底1,500ftの積乱雲が予想されています。日本時間では25日6時から12時までです。
TAFで特に重要な記号
BECMG
BECMGは「Becoming」の略で、指定された時間帯に気象状態が徐々に、または不規則に変化し、その後は変化後の状態が続くと予想される場合に使われます。
BECMG 2418/2420 21008KT
この場合、24日18時UTCから20時UTCまでの間に風が210度8ノットへ変化し、その後もその風が続くという意味です。日本のTAFでは、BECMGの変化期間は原則として2時間以内、長くても4時間以内とされています。
TEMPO
TEMPOは「Temporarily」の略で、一時的な気象変動を表します。個々の変動が1時間以上連続せず、合計しても指定期間の半分未満と予想される場合に使われます。
TEMPO 2421/2503 3000 SHRA BR
この場合、24日21時UTCから25日3時UTCまでの間に、一時的に視程3,000mとなり、しゅう雨ともやが発生する可能性があるという意味です。指定された時間帯のすべてで悪天候になるという意味ではありません。
NSW
NSWは「Nil Significant Weather」の略で、重要な天気現象が終了すると予想される場合に使われます。TAFでは変化群の中で使用されます。
BECMG 2418/2420 9999 NSW
指定された時間帯に降水や霧などの重要な天気が終了し、視程が10km以上になる予想です。
AMD・COR・CNL・NIL
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| AMD | Amendment。発表済み予報の修正 |
| COR | Correction。電文の誤りを訂正 |
| CNL | Cancellation。予報の取り消し |
| NIL | 予報の発表なし、または資料なし |
TAF AMDは気象状況の変化に応じて内容を修正した予報です。新しいTAFだけでなく、AMDが発表されていないかも確認する必要があります。CORは予報判断の変更というより、入力ミスなどの訂正を表します。
FM・PROB30・PROB40
海外のTAFでは、次の記号を見かけることがあります。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| FM241800 | 24日18時00分UTCから新しい状態へ変化 |
| PROB30 | 指定された現象が発生する確率30% |
| PROB40 | 指定された現象が発生する確率40% |
TAFの運用方法や採用する変化群には国ごとの差があります。日本の気象庁が発表するTAFでは、主にBECMGとTEMPOが使用されます。海外のTAFを読む場合は、その国の航空気象機関が定める運用方法も確認してください。
SPECIとは
SPECIは、飛行場の気象状態に運航上重要な変化が生じたとき、次の定時観測を待たずに行われる特別観測の通報です。METARが定時観測であるのに対し、SPECIは一定の基準に該当する変化があったときに随時発表されます。
SPECIは警報や予報ではありません。あくまでも、発表時点における飛行場の気象状態を伝える「実況」です。電文の構成や記号はMETARと基本的に同じで、先頭の識別語がMETARではなくSPECIになります。
SPECIが発表される主な場面
特別観測の具体的な基準には、空港ごとの最低気象条件や関係機関との協議によって設定される値が含まれます。代表的には、次のような変化が対象です。
- 卓越視程が基準値を下回った、または上回った
- 滑走路視距離が基準値を下回った、または上回った
- BKNまたはOVCに相当する最低雲層の雲底が基準を超えて変化した
- 平均風向が60度以上変化し、変化前または変化後の平均風速が10ノット以上となった
- 平均風速が10ノット以上変化した
- 強い突風が観測された
- 並または強い降水、雷電、竜巻、着氷性降水などが始まった、終了した、または強度が変化した
- 航空機の安全な運航に重要と判断される気象変化があった
気象状態が悪化して基準に該当した場合は、速やかに観測・通報されます。好転の場合は、原則として好転した状態が10分間継続したことを確認してから通報されます。ただし、今後も10分以上継続すると判断された場合には、10分を待たずに通報されることがあります。
SPECIの解説用電文
次の電文も、小松飛行場を使用した解説用の架空例です。
SPECI RJNK 241425Z 27018G30KT 3000 +SHRA BR BKN008 SCT015CB 19/18 Q1004=
SPECI
運航上重要な気象変化に伴う特別観測の通報です。
RJNK
小松飛行場を示します。
241425Z
24日14時25分UTCの観測です。日本時間では24日23時25分です。
27018G30KT
真方位270度から18ノット、最大瞬間風速30ノットの風です。
3000
卓越視程3,000mです。
+SHRA BR
強いしゅう雨ともやが観測されています。「+」は強い現象、「SH」はしゅう雨性、「RA」は雨、「BR」はもやを表します。
BKN008 SCT015CB
雲底800ftにBKNの雲、雲底1,500ftにSCTの積乱雲があります。
19/18
気温19℃、露点温度18℃です。
Q1004
QNHが1,004hPaであることを示します。
METAR・SPECI・TAFに共通する主な記号
時刻・風・視程・気圧
| 表示例 | 意味 |
|---|---|
| RJNK | 小松飛行場のICAO4文字地点略号 |
| 241425Z | 24日14時25分UTC |
| 27012KT | 270度から12ノットの風 |
| 27012G25KT | 270度から12ノット、最大瞬間風速25ノット |
| VRB02KT | 風向が定まらず、風速2ノット |
| 00000KT | 静穏 |
| 300V010 | 風向が300度から010度の間で変動 |
| 3000 | 視程3,000m |
| 9999 | 視程10km以上 |
| CAVOK | 視程、天気、雲が規定された良好条件を満たす |
| Q1012 | QNHが1,012hPa |
| 18/14 | 気温18℃、露点温度14℃ |
| M02/M05 | 気温マイナス2℃、露点温度マイナス5℃ |
| AUTO | 自動観測によるMETARまたはSPECI |
| RMK | 国内記事や補足情報の始まり |
| COR | 訂正報 |
| NIL | 通報または予報なし |
CAVOKは単に「晴れ」という意味ではありません。卓越視程が10km以上で、5,000ftまたは最低扇形別高度のいずれか高い高度より下に雲がなく、積乱雲や塔状積雲などの重要な対流雲がなく、通報・予報すべき重要な天気現象もない場合に使用されます。
天気現象の強度と特性
天気記号は、「強度または周辺」「現象の特性」「降水や視程障害などの現象」の順に組み合わせます。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| – | 弱い |
| 記号なし | 並の強さ |
| + | 強い |
| VC | 飛行場周辺 |
| SH | しゅう雨性 |
| TS | 雷電 |
| FZ | 着氷性 |
| MI | 地霧など浅い現象 |
| BC | 散在する霧など |
| PR | 飛行場の一部を覆う現象 |
| DR | 低い地吹雪など |
| BL | 高い地吹雪、吹き上げ |
主な降水・視程障害現象
| 記号 | 意味 | 組み合わせ例 |
|---|---|---|
| RA | 雨 | -RA 弱い雨 |
| DZ | 霧雨 | FZDZ 着氷性の霧雨 |
| SN | 雪 | +SN 強い雪 |
| RASN | 雨と雪 | -RASN 弱い雨と雪 |
| SHRA | しゅう雨 | +SHRA 強いしゅう雨 |
| TSRA | 雷雨 | +TSRA 強い雷雨 |
| GR | ひょう | TSGR 雷電とひょう |
| GS | 小さいひょう、雪あられ | SHGS しゅう性の雪あられなど |
| BR | もや | 視程がおおむね1km以上5km以下 |
| FG | 霧 | 視程1km未満 |
| HZ | 煙霧 | ちりなどによる視程障害 |
| FU | 煙 | 火災などの煙 |
| VA | 火山灰 | 火山灰による視程障害 |
| SQ | スコール | 急激な風速増加 |
| FC | 漏斗雲、竜巻、水上竜巻 | +FCは竜巻または水上竜巻 |
| SS | 砂じん嵐 | 強い砂の嵐 |
| DS | ちり煙霧 | 強いちりの嵐 |
雲に関する記号
| 記号 | 雲量 | 全天を8とした場合 |
|---|---|---|
| FEW | 少しの雲 | 1~2オクタス |
| SCT | 散在する雲 | 3~4オクタス |
| BKN | 隙間のある雲層 | 5~7オクタス |
| OVC | 全天を覆う雲 | 8オクタス |
雲量の後に続く3桁の数字は、雲底高度を100ft単位で表します。
FEW020:雲底2,000ftに少しの雲SCT030:雲底3,000ftに散在する雲BKN008:雲底800ftに隙間のある雲層OVC003:雲底300ftで全天を覆う雲SCT015CB:雲底1,500ftに散在する積乱雲BKN020TCU:雲底2,000ftに塔状積雲VV003:霧などで空が見えず、鉛直視程300ftNSC:重要な雲なしNCD:自動観測で雲を検出せず
航空では、一般的にBKNまたはOVCとなっている最も低い雲層や鉛直視程が、運航上重要な「シーリング」として扱われます。FEWやSCTの雲だけであれば、通常はシーリングとは扱われません。ただし、積乱雲や塔状積雲は雲量にかかわらず重要です。
RVRとウインドシアーに関する表示
視程が悪い場合には、滑走路視距離であるRVRが記載されることがあります。
R06/1200U
これは、滑走路06のRVRが1,200mで、値が上昇傾向にあることを示します。末尾のUは上昇、Dは下降、Nは顕著な変化なしです。
WS R06は滑走路06付近のウインドシアー、WS ALL RWYはすべての滑走路に関するウインドシアー情報を表します。これらは離着陸時の航空機に大きな影響を与えるため、特に注意が必要です。
METAR・SPECI・TAFはセットで確認する
航空機の運航状況や空港の天候を把握する場合は、いずれか一つだけを見るのではなく、METAR、SPECI、TAFを組み合わせて確認することが大切です。
- 最新のMETARで現在の気象状態を確認する
- METAR発表後にSPECIが出ていないか確認する
- TAFで今後の風、視程、天気、雲の変化を確認する
- TAF AMDやTAF CORなどの新しい電文がないか確認する
- 雷、台風、火山灰、乱気流などはSIGMETや各種航空気象情報も確認する
例えば、TAFで数時間後にTEMPO 2000 TSRA BKN005CBと予報されていれば、現在のMETARがCAVOKであっても、その後に雷雨や視程悪化、低い積乱雲が発生する可能性があります。反対に、TAFで悪天候が予報されていても、現時点で実際にどうなっているかはMETARやSPECIで確認しなければなりません。
METAR・SPECI・TAFを確認できるサイト
気象庁「航空気象情報」
航空気象に関する気象図、飛行場時系列予報、SIGMET、雷や霧の情報などを確認できます。
https://www.data.jma.go.jp/airinfo/index.html
気象庁「飛行場時系列予報・飛行場時系列情報」
TAFと同じ予報作成過程を基にした、空港ごとの風、視程、天気、雲などの時系列予報を確認できます。暗号形式のTAFに慣れていない場合にも便利です。
https://www.data.jma.go.jp/airinfo/data/awfo_taf.html
気象庁「飛行場に関する気象情報」
TAF、TREND、離陸用飛行場予報、飛行場時系列予報の対象、発表回数、有効期間などが解説されています。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/3_yohou/31_hikoujou/31_hikoujou.html
中部航空地方気象台「航空気象情報」
METAR、SPECI、TAFの電文例と各項目の詳しい読み方が掲載されています。
https://www.data.jma.go.jp/chubu-airport/ymyx/product.html
公益社団法人日本航空機操縦士協会「日本のTAF&METAR」
国内空港を地域別に選択し、外部サイトを通じてMETARやTAFを確認できます。
国際気象海洋「METAR・TAF電文」
国内各地のMETARやTAFを一覧で確認しやすい民間サイトです。気象庁公式サイトではないため、重要な判断では公式情報や運航機関向け情報と併用してください。
OGIMET
世界各地のMETAR、SPECI、TAFと過去の電文を検索できます。空港のICAO4文字地点略号を入力し、METAR・SPECI、SPECIのみ、TAFなどを指定して検索します。
https://www.ogimet.com/metars.phtml.en
まとめ
METAR、SPECI、TAFはいずれも航空機の安全な運航を支える重要な航空気象情報ですが、それぞれ役割が異なります。METARは定時の実況、SPECIは重要な変化が生じた場合の臨時実況、TAFは今後の飛行場予報です。
電文を読むときは、最初に地点略号と日時を確認し、風、視程、天気、雲の順に読み進めます。TAFでは、さらに有効期間、BECMG、TEMPO、AMDなどを確認することが重要です。特に日時はUTCで表示されるため、日本国内では9時間を加えて日本時間へ換算します。
ただし、TAFは30時間の予報であり、気象状態を完全に保証するものではありません。実際の運航や飛行計画では、最新のMETARやSPECI、修正されたTAF、SIGMET、気象レーダー、航空会社や関係機関から提供される情報を総合的に確認する必要があります。
参考・出典
- 中部航空地方気象台「航空気象情報」
https://www.data.jma.go.jp/chubu-airport/ymyx/product.html
- 気象庁「航空気象観測の完全自動化と自動METAR/SPECI報」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/27_jidoka/27_jidoka.html
本記事は2026年6月時点で公開されている気象庁資料を基に作成しています。航空気象情報の通報形式や提供方法は改正される場合があります。実際の航空機運航に利用する場合は、最新の公式資料、航空情報および運航機関から提供される情報を確認してください。
本日も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました!
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