無線機やアンテナを買った時、奥さんになんて言う?〜無線家の言い訳集と揉めないための現実策〜

アマチュア無線を続けていると、どうしても機材が増えていきます。最初はハンディー機1台だったはずが、固定機が増え、安定化電源が増え、SWR計が増え、アンテナ切替器が増え、いつの間にか机の上は「ちょっとした趣味のスペース」ではなくなっています。本人にとっては、それぞれに明確な役割があります。「これはHF用」「これは144MHz・430MHz帯用」「これは1200MHz帯用」「これは移動運用用」。ところが、無線をしない家族から見ると、かなりの確率で「また黒い箱が増えた」に見えます。

アンテナは、さらに厄介です。無線機なら机の上に置けますが、アンテナは外から見えます。昨日までなかった八木アンテナが屋根の上に載れば、説明せざるを得ません。タワーに至っては、工事業者が来て、基礎を造り、鉄骨が立ち上がります。「ちょっと部品を買った」では済みません。もはや家庭内の設備投資案件です。

そんな時、無線家は何と言うのか。「中古だった」「安かった」「ポイントで買った」「防災にも使える」「今の無線機では出られない周波数だから」。どれも、一度くらいは頭に浮かびそうな言葉です。

今回は、そんな無線家の言い訳を、少しだけマーケティングの視点も交えながら考えてみます。ただし、目的は言い訳の技術を磨くことではありません。後半では、そもそも言い訳をしなくて済むようにするにはどうしたらよいのか、かなり現実的に考えてみます。

まずは無線家の言い訳集

「中古だったから安かった」

かなり使いやすそうに見える言い訳です。新品15万円の無線機を10万円で買えば、本人の中では「5万円安く買えた」となります。ところが、奥さんからすれば「10万円使った」です。

ここで無線家は、ついこう説明したくなります。

「いや、新品なら15万円するんだよ」

すると、

「買わなければ0円だよね」

これで終わります。

マーケティングでは、最初に高い価格を見せて、その後の価格を安く感じさせる方法があります。無線家も知らず知らずのうちに同じことをしています。しかし、家庭内で最も強い比較対象は「定価」ではありません。「買わない」という選択肢です。

だから、「中古で安かった」は事実としては正しくても、それだけで購入理由にはなりません。

「セールだった。今しかなかった」

これもありがちです。無線ショップの決算セール、イベント特価、周年セール。通常より1万円、2万円安くなっていれば、無線家としては「買うなら今」と思います。

しかし、奥さんからすると、「今買わなければならない理由」には見えません。

「今日まで2万円引きだったんだよ」

「でも、13万円は払ったんでしょ?」

はい、その通りです。

セールは「買う予定だったもの」を安く買える時には有効ですが、「安いから買った」になると話は変わります。無線家にとっての2万円引きと、家族にとっての13万円支出。この見え方の違いは大きいものです。

「ポイントを使ったから、そんなに払ってない」

これも強そうに聞こえます。実際、数万ポイントを使えば、財布から出る金額は減ります。

「半分くらいポイントだから」

と言えば、少し安心してもらえるかもしれません。

ただし、相手が家計管理に詳しい場合は、

「そのポイント、旅行や日用品にも使えたよね」

と返ってきます。

ポイントは、無線家の財布の中では「無線機を安くする魔法の数字」に見えますが、家庭全体で見れば立派な資産です。ここでも、無線家と家族では見方が違います。

「壊れたから買い替えた」

比較的納得されやすい理由です。家電製品でも、壊れたら買い替えます。無線機でも同じです。

ところが、新しい無線機を設置した数日後、奥さんが古い無線機を指して言います。

「これ、壊れたんじゃなかったの?」

「いや、送信はちょっと不安定だけど、受信には使えるから」

この時点で、話が怪しくなってきます。

無線家にとっては、送信出力の低下、ロータリーエンコーダーの不具合、液晶の劣化、周波数安定度の問題など、立派な買い替え理由があります。しかし、家族から見れば「電源が入って音も出ている」です。

本当に買い替えなら、旧機を売る、予備機として残すならその理由を説明する。そこまで含めて初めて、「買い替え」という言葉に説得力が出てきます。

「これは今まで持っていなかった周波数用」

無線家としては、かなり正当な理由です。HF機を持っているからといって、1200MHz帯まで運用できるとは限りません。144MHz・430MHz帯の無線機を持っていても、HFは別です。アンテナも同じです。

しかし、奥さん側の認識は、もっと単純です。

「無線機、もう何台もあるよね?」

「いや、これは1200MHz帯用で、こっちはHF用で……」

「何が違うの?」

ここで周波数、モード、出力、アンテナ利得の話を始めても、たいていの場合は説明が長くなるだけです。

この場合は、別の趣味に置き換えた方が伝わります。カメラなら、「広角レンズと望遠レンズは用途が違う」。釣りなら、「海釣りと渓流釣りでは道具が違う」。ゴルフなら、「全部同じクラブではない」。

無線家が説明したいのはスペックですが、家族が知りたいのは「なぜもう1台必要なのか」です。

「防災にも使える」

これは便利な言葉です。ハンディー機、モービル機、バッテリー、ポータブル電源などは、実際に災害時に役立つ可能性があります。

ただし、使い過ぎると危険です。

無線機が5台、アンテナが6本、安定化電源が3台あり、そのうえ新しい八木アンテナを買って、

「防災にも使えるから」

と言うと、

「随分、本格的な防災だね」

と返ってくるかもしれません。

防災という理由は、本当に防災性がある機材に限って使った方がよさそうです。1200MHz帯の高利得アンテナまで防災用品に含め始めると、そろそろ無理があります。

「前から持ってたよ」

無線家の間では、冗談としてよく出てくる言葉です。しかし、実際に使うのはおすすめできません。

家族は、意外と見ています。机の上の配置、箱の新しさ、昨日までなかったケーブル、宅配便の荷札。それ以上に厄介なのが、昼間に届いた箱です。

夕方、奥さんが玄関で受け取った段ボール箱に「ICOM」と書いてあったのに、夜になって、

「これ?前からあったよ」

と言う。

これはかなり無理があります。

アンテナならさらに困難です。昨日までなかったものが屋根に載っています。「前からあった」は物理的に通用しません。

「思っていたより安かった」

価格を少しぼかす方法です。

「いくらしたの?」

「まあ、10万円くらい」

実際には14万8,000円。

昔なら、これで済んだかもしれません。しかし今は型番を検索すれば、おおよその価格はすぐに出てきます。クレジットカードの利用明細にも残ります。

しかも後から金額が分かると、問題は「14万8,000円の無線機を買ったこと」ではなくなります。

「どうして10万円くらいって言ったの?」

こちらの方が、はるかに厄介です。

無線機は売れますが、家庭内の信用は中古市場で買い戻せません。

問題は無線機ではなく「突然買うこと」

ここまで言い訳を並べてきましたが、家族が本当に気にしているのは、無線機そのものではない場合があります。

問題になりやすいのは、「聞いていない」「急に高いものを買った」「家計から出ている」「物が増え続けている」「置き場所を取っている」といった部分です。

つまり、「無線機を買ったこと」ではなく、「買い方」が問題なのです。

これはマーケティングでも同じです。商品そのものが悪いわけではなく、相手にとっての価値が見えていない、価格に納得できない、導入のタイミングが悪い。家庭内でも、かなり似ています。

「新しい無線機が欲しい」とだけ言えば、単なる物欲に聞こえます。しかし、「今の無線機では1200MHz帯に出られない」「移動運用用に小さくて軽い機種が必要」「古いアンテナが傷んできたので交換したい」と説明すれば、目的が見えてきます。

家族が知りたいのは、受信感度やダイナミックレンジの数値ではありません。「それを買うと何が変わるのか」です。

無線家がやりがちな「説明の失敗」

無線家は機械の話になると、つい詳しく説明したくなります。

「今度の機種はバンドスコープが見やすくなって、受信性能も上がって、USBで直接つながって……」

本人は一生懸命説明しています。しかし相手は、

「で、今の無線機では駄目なの?」

と聞きたいだけだったりします。

これは営業の場でもよくある話です。売り手は機能を説明しますが、買い手は「自分にどんなメリットがあるのか」を知りたい。家庭内でも同じです。

「前のより高性能だから」ではなく、「今できないことができるようになる」。この説明の方が、ずっと分かりやすいでしょう。

言い訳をしなくて済むための具体策

ここからは少し真面目に考えます。趣味を長く続けるなら、毎回言い訳を考えるより、最初から揉めにくい仕組みを作った方が楽です。

無線用の年間予算を決める

まず、一年間に無線へ使ってよい金額を決めます。月1万円なら年間12万円、月2万円なら24万円です。ボーナスから一定額を追加してもよいでしょう。

重要なのは、無線機本体だけを予算に入れないことです。アンテナ、同軸ケーブル、コネクター、安定化電源、測定器、修理費、移動運用用品、イベント参加費なども含めます。

例えば年間20万円と決めたなら、その範囲で何を買うか考えます。15万円の無線機を買えば、残りは5万円です。その年は大きなアンテナは見送る。逆に、今年はアンテナを更新するから無線機は買わない。こうして優先順位を付けられます。

予算を決めるのは、趣味を我慢するためではありません。欲しいものを堂々と買えるようにするためです。

無線専用の口座や財布を作る

生活費と趣味のお金を分ける方法も有効です。毎月決めた金額を無線用口座に移し、無線機を売った代金もそこへ戻します。

10万円たまったら、その範囲で買う。15万円の無線機が欲しいなら、あと5万円たまるまで待つ。

こうしておけば、「家計から突然15万円出した」という状況がなくなります。

また、本人にとっても、「買えるかどうか」が分かりやすくなります。口座残高が8万円なら、15万円の無線機はまだ買わない。非常に単純です。

「買ったら売る」を原則にする

無線関係で家庭内の不満になりやすいのは、お金だけではありません。場所も大きな問題です。

無線機が増える。
箱が増える。
ケーブルが増える。
アンテナが増える。
「いつか使うかもしれない部品」が増える。

気付けば、押し入れの一角が完全に無線倉庫になります。

そこで、「1台買ったら1台売る」を基本にします。新しい無線機を買ったら、使わなくなった旧機を手放す。アンテナを交換したら、古いアンテナを整理する。

10万円で新しい無線機を買い、古い無線機が6万円で売れれば、追加負担は4万円です。置き場所も増えません。

無線機は中古市場が比較的しっかりしているため、この方法は現実的です。

金額によって相談ラインを決める

毎回、「これ買っていい?」と聞くのも大変です。そこで、家庭内で基準を決めてしまう方法があります。

例えば、1万円未満は自分の趣味予算から自由。1万円から5万円は事前に一言。5万円を超えるものは相談する。10万円以上は、購入時期も含めて話し合う。

金額は家庭によって違います。大切なのは、基準があることです。

「5万円までは自分の趣味予算で自由」と分かっていれば、買う側も気が楽ですし、家族側も突然高額な買い物をされる不安が減ります。

大型アンテナやタワーは別枠で考える

タワーや屋根上アンテナは、無線機とは扱いを分けた方がよいでしょう。

外観が変わる。工事業者が出入りする。強風や積雪への対策が必要になる。将来、撤去費用も掛かります。近隣への配慮が必要な場合もあります。

これは「自分のお小遣いで買ったから自由」という話ではありません。

タワーを建てるなら、工事費だけでなく、維持費、保険、将来の撤去まで含めて説明する。大型アンテナを上げるなら、設置場所や安全性も確認する。

ここまで準備して初めて、「趣味の買い物」ではなく「家の設備」として話ができます。

欲しいものは一度リストに入れる

新製品が発表されると、欲しくなります。ハムフェアや無線ショップへ行けば、さらに欲しくなります。

そこで、すぐ買わずに「欲しいものリスト」に入れます。「今すぐ必要」「半年以内に欲しい」「気になる」の三段階程度で十分です。

「今すぐ必要」に入るのは、故障した電源や、今の運用に明確に不足している機材です。「気になる」に入るのは、なくても困らないけれど欲しいものです。

数週間後に見直すと、意外と熱が冷めているものもあります。

買う前に三つだけ確認する

高額な機材を買う前に、自分に三つ質問します。

「今の設備で何ができないのか」
「これを買うと何ができるようになるのか」
「1年後も使っていると思うか」

三つとも明確に答えられれば、購入理由はかなりはっきりしています。

「新しいから」「何となく欲しい」「みんな持っているから」しか出てこなければ、一度止めてもよいでしょう。

無線機は逃げません。セールは終わっても、次のセールが来ることがあります。

家庭内の信用は日頃の積み重ね

最後に、もう少し現実的な話をします。

新しい無線機が届いた時、奥さんから「また買ったの?」と聞かれたとします。この時、普段から趣味のお金を自分で管理していて、生活費には手を付けず、使わない機材も整理している人なら、

「うん。前から欲しかったやつ。無線用にためていたお金で買った。今まで使っていた方は売る予定」

このくらいで済むかもしれません。

一方で、前回の無線機の金額を少なく言っていた。使っていない機材が部屋に積んである。宅配便が届くたびに「安かった」と言っている。そうなると、新しい無線機そのものより、「またなの?」という感情が先に出てきます。

家庭内で大切なのは、「ちゃんとしている人」という抽象的なブランドではありません。もっと具体的です。

生活費には手を付けない。高いものは先に話す。買ったら使う。使わなくなったものは整理する。金額をごまかさない。

この積み重ねです。

マーケティングでいうブランドは、広告で作るものではなく、日々の体験で作られます。家庭でも同じでしょう。

新しい無線機を買った時に、巧妙な言い訳を考えなければならない状態より、

「これ、前から欲しかったやつ。半年ためて買った」

と言える方が、はるかに楽です。

そして、奥さんから、

「で、いくらしたの?」

と聞かれたら、

「14万8,000円」

ここは正直に答える。

もしかすると、

「高っ!」

と言われるかもしれません。

でも、その方が後は早いです。

無線は長く楽しむ趣味だから

アマチュア無線は、一度設備をそろえれば終わりという趣味ではありません。運用する周波数が増えれば無線機が欲しくなり、無線機を買えばアンテナが欲しくなり、アンテナを替えれば測定器が欲しくなります。設備が整った頃には、新製品が発表されます。

おそらく、これは今後も変わりません。

だからこそ、その都度言い訳を考えるより、「無線には年間いくらまで使う」「高額な機材は相談する」「買ったら整理する」といった、自分なりのルールを作った方が長く楽しめます。

無線家にとって一番難しいのは、DXを呼ぶことでも、アンテナを調整することでもなく、「今の設備で十分」と思うことなのかもしれません。

それでも新しい無線機が欲しくなったら、まずは欲しいものリストへ。

そして翌日も欲しかったら、予算を確認する。

一週間後も欲しかったら、もう一度考える。

それでも欲しかったら―その時は、奥さんに相談しましょう。

たぶん、それが一番安く済みます。

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