アマチュア無線局 JF9OYU/ライセンスフリー無線局 いしかわJK946 です。いつもブログをお読みいただきまして、心より感謝申し上げます。
さて、航空自衛隊小松基地で航空機を眺めたり、航空祭で飛行展示を撮影したりするとき、目の前の動きを立体的に理解する手掛かりになるのが航空無線です。戦闘機が地上走行を始める前、滑走路へ進入するとき、編隊が基地へ戻ってくるとき。管制官と操縦者の短い交信を聞くことで、次に何が起こるのかをある程度予測できるようになります。
ただし、航空無線は航空機の動きを実況する放送ではありません。安全な運航に必要な許可、指示、情報を簡潔かつ正確に伝える業務通信です。本記事では、航空自衛隊機の離着陸を理解するために必要な管制区分、一般公開されている小松飛行場の周波数、交信の基本的な流れ、航空祭や写真撮影での聞き方を整理します。民間航空会社のカンパニー波などは扱わず、航空自衛隊機の管制交信に焦点を絞ります。
小松基地の航空無線が面白い理由
小松基地は1961年に開設され、日本海側で戦闘機部隊が所在する航空自衛隊基地です。第6航空団の飛行部隊に加え、飛行教導群、小松救難隊、小松管制隊などが所在しています。小松救難隊はU-125A救難捜索機とUH-60J救難ヘリコプターを運用し、航空機搭乗員の捜索救助や災害派遣に備えています。
小松飛行場は小松空港との官民共用飛行場でもあり、航空自衛隊の戦闘機や救難機と民間旅客機が同じ滑走路を使用します。このため、管制官は機種ごとに大きく異なる速度や飛行特性を考慮しながら、安全な間隔を確保しなければなりません。小松管制隊は、管制塔とレーダー管制施設から、飛行場と周辺空域を飛ぶ航空機に指示や情報を提供しています。
特に冬の北陸は、雷、降雪、強風などの影響を受けやすい地域です。小松管制隊は、雷電観測データと管制レーダーの降水域画像を照合し、航空機を雷に遭遇させない経路を選びながら誘導していると説明しています。航空無線を聞くことは、単に戦闘機の動きを先読みするだけでなく、気象、滑走路、航空交通の状況を踏まえて安全を支える管制の仕事を知ることにもつながります。
航空自衛隊機はUHF帯を使うことが多い
航空無線の受信で最初に理解しておきたいのは、VHF帯とUHF帯の違いです。民間航空機の管制交信は主に118~137MHz帯のVHFを使用します。一方、航空自衛隊機は225~400MHz帯のUHFを使う場面が多く、小松基地でもGND、TWR、APP、DEP、GCAなどにUHF周波数が用意されています。
ただし、「民間機はVHF、自衛隊機はUHF」と完全に分かれているわけではありません。航空自衛隊機がVHFを使用することもあり、同じ管制席に複数の周波数が割り当てられている場合もあります。受信機はAMモードに設定し、できればVHF航空帯だけでなく225~400MHz帯のAM受信にも対応する機種を用意したいところです。
周波数の数字だけを登録しても、受信モードがFMになっていると音声を正しく復調できません。メモリー登録時には、周波数とともにAMモードになっているかを必ず確認してください。
小松基地で押さえておきたい航空管制周波数
以下は、航空路誌情報を転載・整理した公開周波数資料と複数の航空無線資料を照合し、小松飛行場の管制交信を受信するための候補として整理したものです。単位はMHz、受信モードはAMです。
| 管制区分 | VHF | UHF | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| 小松GND | 121.700 | 275.800 | 駐機場周辺や誘導路における地上走行の管制 |
| 小松TWR | 118.250、126.200 | 236.800、304.800 | 滑走路への進入、離陸、着陸、飛行場周辺の管制 |
| 小松APP/RDR | 120.100、121.250 | 261.200 | 到着機の進入順位、方位、高度などの管制 |
| 小松DEP | 120.100、121.250 | 362.300 | 離陸後の上昇、方位、次の管制機関への移管 |
| 小松TCA | 127.950 | 292.200 | 周辺を飛行するVFR機などへの情報提供 |
| 小松GCA/RDR | 125.300、134.100 | 247.300、270.800、300.700、302.200、304.600、315.000、319.000、335.600 | レーダーを使用した進入・着陸誘導 |
割り当てられた周波数がすべて同時に使われるわけではなく、交通量、管制席の運用、訓練内容、行事などによって使用波は変わります。周波数も将来変更される可能性があるため、利用前には国土交通省のAIS JAPANで最新の航空路誌を確認してください。
最初に登録したい4波
初めて小松基地の航空無線を聞く場合は、最初から全周波数を高速走査するより、航空自衛隊機で使われる可能性が高い次のUHF4波を軸にした方が、交信の流れを追いやすくなります。
| 優先 | 周波数 | 管制区分 | 聞きどころ |
|---|---|---|---|
| 1 | 304.800 | TWR | 滑走路進入、離陸許可、着陸許可。過去の航空祭でも使用例が多い周波数 |
| 2 | 275.800 | GND | 地上走行開始、誘導路、滑走路手前での待機 |
| 3 | 261.200 | APP/RDR | 帰投機の進入、方位・高度の指示、TWRへの移管 |
| 4 | 362.300 | DEP | 離陸後の上昇と次の管制担当への移管 |
この4波は「必ず使われる固定チャンネル」という意味ではありません。小松TWRだけでも複数のVHF・UHF周波数があり、実際の使用波はその都度変わります。航空祭では304.800MHzが使われる傾向が知られていますが、当日も同じとは限りません。受信できない場合は、同じ管制区分の別周波数へ切り替える必要があります。
出発時の交信はGNDからTWR、DEPへ
通常訓練で航空自衛隊機が出発するときの基本的な流れは、次のように考えると分かりやすくなります。
GND → TWR → DEP/RDR → 次の管制担当
GNDで地上走行の始まりをつかむ
GNDは、駐機場周辺から滑走路手前までの地上走行を担当します。操縦者は自機の呼出符号、機数、現在位置などを伝え、管制官から使用する誘導路や待機位置の指示を受けます。
撮影する側にとっては、GNDで交信が始まった時点が「機体が動き出す可能性が高まった」という最初の合図です。「taxi」「holding point」「hold short」といった語が聞こえたら、滑走路方向と誘導路を確認し、撮影位置を整えます。
TWRで滑走路進入と離陸の瞬間を読む
滑走路手前まで進んだ航空機はTWRへ移ります。TWRでは、滑走路への進入、滑走路上での待機、離陸、着陸などが扱われます。
「line up and wait」は滑走路へ入って待機する指示、「cleared for takeoff」は離陸許可です。風向・風速が続けて伝えられることもあります。航空自衛隊機は複数機で行動することがあるため、呼出符号の後に「flight」と機数が加わる場合があります。編隊全体に対する指示なのか、個々の機体に対する指示なのかを聞き分けることが大切です。
離陸許可が聞こえてからカメラを構えるのでは、戦闘機の加速に追いつけないことがあります。GNDからTWRへ移った段階、あるいは滑走路進入の指示が出た段階で、露出、シャッター速度、オートフォーカスの設定を確認しておくと余裕が生まれます。
DEPで離陸後の流れを追う
離陸した航空機は、TWRからDEPまたはRDRへ移管されます。「contact Komatsu Departure」のように次の管制席と周波数を指示する交信が聞こえたら、受信機もDEPへ切り替えます。
DEPでは方位、高度、上昇などの指示が中心になります。その後、担当が別の管制機関へ移れば、小松飛行場の管制周波数から交信が聞こえなくなることがあります。無線が途切れたからといって、飛行が終わったわけではありません。
帰投時はAPP/RDRからTWR、GNDへ
帰投時の基本的な流れは、出発時と反対です。
APP/RDR → 必要に応じてGCA → TWR → GND
APP/RDRで帰投を早めに知る
APPやRDRは、基地へ戻る航空機をレーダーで把握し、進入順位、方位、高度、速度などを調整します。撮影者にとっては、目視できない距離にいる帰投機を早めに知る手掛かりとなります。
「runway zero six」「runway two four」のように滑走路番号が聞こえれば、どちらの方向から進入するのかを考えられます。小松飛行場の滑走路は06/24です。ただし、航空機の進入方式や訓練内容によって動きは変わるため、滑走路番号だけで飛行経路を断定しないことが大切です。
軍用飛行場らしさを感じるGCA
GCAはGround Controlled Approachの略で、日本語では着陸誘導管制と呼ばれます。地上の管制官がレーダーで航空機の位置を確認し、方位と降下経路を音声で細かく伝えながら着陸へ導きます。
航空自衛隊の公式説明では、ASRは飛行場周辺の航空機を捉えて進入・出発管制に使用するレーダー、PARは最終進入開始地点から着陸まで航空機を正しい降下経路へ誘導する精測進入レーダーとされています。
GCAでは「on course」「slightly left」「slightly above glide path」など、機体が基準経路に対してどこにいるかを連続して伝える表現が使われます。通常のTWR交信より管制官が長く話し続けるため、初めて聞いてもGCAだと気付きやすいでしょう。これは悪天候時だけでなく、操縦者と管制官の練度を維持するための訓練として実施されることもあります。
TWRからGNDへ
最終進入に入った航空機はTWRへ移り、「cleared to land」で着陸許可を受けます。「go around」が聞こえた場合は着陸を取りやめて上昇します。「low approach」や「touch and go」など、完全着陸を伴わない飛行が行われることもあるため、一度滑走路へ近づいたからといって撮影を終えない方がよいでしょう。
着陸して滑走路を離脱した後はGNDへ移り、駐機場までの地上走行指示を受けます。
覚えておくと役立つ基本用語
以下は、特定の実際の交信を再現したものではなく、航空管制で一般に使われる語の意味を撮影者向けに整理したものです。
| 英語 | 意味 | 撮影時の見方 |
|---|---|---|
| taxi | 地上走行 | 機体が駐機位置から動き出す可能性 |
| hold short | 指定地点の手前で待機 | すぐに滑走路へ入らない |
| line up and wait | 滑走路へ進入して待機 | 離陸が近いが、まだ離陸許可ではない |
| cleared for takeoff | 離陸を許可 | 直後に離陸滑走が始まる可能性が高い |
| initial | 場周経路へ入る前の進入位置 | 戦闘機の目視進入で聞かれることがある |
| break | 編隊や機体が旋回して間隔を作る動き | 機体が大きくバンクする場面に備える |
| downwind | 滑走路と反対向きに飛ぶ場周経路 | 着陸前の位置関係を把握しやすい |
| final | 滑走路正面の最終進入 | 着陸撮影の最終準備 |
| cleared to land | 着陸を許可 | 接地に備える |
| low approach | 接地せず低空で滑走路上を通過 | 通過後の上昇まで追う |
| touch and go | 接地後、停止せず再離陸 | 一連の動作を連写で追う |
| go around | 着陸を中止して再上昇 | 機首上げと上昇に備える |
| contact | 指定された次の管制周波数へ移る | 受信機のバンクを切り替える |
航空無線では数字も独特に聞こえます。9を「ナイナー」、3を「ツリー」、5を「ファイフ」と発音する場合があり、滑走路06は「ランウェイ・ゼロ・シックス」、24は「ランウェイ・ツー・フォー」と読みます。最初は文章全体を聞き取ろうとせず、呼出符号、機数、滑走路番号、方位、高度、次の管制席の順に拾うと理解しやすくなります。
航空祭での受信と撮影に生かす方法
航空祭では多数の航空機が短い時間に動くため、周波数を多く登録し過ぎると、肝心のTWR交信を聞き逃すことがあります。まずTWRを固定受信し、もう一台の受信機やデュアル受信機能でGND、APP/RDR、DEPを走査する方法が実用的です。受信機が一台だけなら、展示飛行の直前はTWRを優先し、帰投機を待つ時間帯にAPP/RDRを確認すると流れを追いやすくなります。
受信した内容だけで飛行時刻や経路を断定してはいけません。航空祭の進行は、安全上の理由、天候、救難出動、民間機の発着などにより変更されます。公式プログラムと場内放送を基本にし、航空無線は動きを理解する補助情報として使うのが適切です。
また、受信機の画面を見続けると接近する航空機を見失います。周波数は事前にメモリー登録し、イヤホンは周囲の案内や警告が聞こえる音量にとどめてください。会場の立入禁止区域、通路、観覧上の注意を守ることは当然であり、受信や撮影のために安全を損なってはなりません。
小松基地の航空無線は管制の仕事を知る入口になる
小松基地の航空無線は、戦闘機の離陸を先回りして撮影するためだけのものではありません。地上走行を担当するGND、滑走路と飛行場周辺を担当するTWR、離着陸機を整えるAPP、RDR、DEP、そしてレーダーで最終進入を支えるGCA。それぞれが航空機を受け渡しながら、安全な飛行を支えています。
初めて聞くと交信は速く、雑音も多く、何を話しているのか分からないかもしれません。しかし、まず304.800MHzのTWR、275.800MHzのGND、261.200MHzのAPP/RDR、362.300MHzのDEPを登録し、航空機の実際の動きと照らし合わせれば、少しずつ言葉と場面が結び付いてきます。
そして、聞き取れない部分を想像で補わないことも大切です。航空無線は安全に直結する業務通信であり、短い交信の背後には、操縦者、航空管制官、気象、整備、救難など、多くの専門職による連携があります。そのことに敬意を払いながら受信すれば、小松基地の航空祭や日常訓練を見る視点は、これまで以上に深くなるはずです。
法令上の注意
電波法第59条は、特定の相手方に対する無線通信を傍受し、その存在や内容を漏らしたり、窃用したりすることを禁じています。受信した航空無線の具体的内容を第三者に話すこと、録音や文字起こしをSNS、動画、配信などで公開することは避けてください。本記事も、公開されている周波数、管制区分、一般的な用語の説明に限定しています。
本日も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました!
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