外国語FM放送の今〜InterFM、FM COCOLO、LOVE FMの30年と名古屋2局の閉局〜

アマチュア無線局 JF9OYU/ライセンスフリー無線局 いしかわJK946 です。いつもブログをお読みいただきまして、心より感謝申し上げます。

さて、1990年代後半、東京、大阪、福岡、名古屋には「外国語FM放送」という新しい種類の民放FM局が相次いで誕生しました。

英語をはじめ、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語などが流れる放送は、既存の県域FM局とは明らかに異なる雰囲気を持っていました。海外の音楽や文化を積極的に扱う選曲も含め、都市の国際化を電波で表現したような存在だったと思います。

ところが2026年8月現在、放送を続けているのは東京のinterfm、大阪のFM COCOLO、福岡のLOVE FMです。名古屋ではRadio-iが2010年、Radio NEOが2020年に放送を終えました。

残った3局も開局時とは資本関係や運営会社が異なります。番組表を見ると、日本語の音楽番組やトーク番組が多く、「外国語放送局」という呼び方と実際の放送内容との間に距離を感じることもあります。

外国語FM放送は役割を失ったのでしょうか。

結論から書けば、役割が消えたのではありません。公共性の高い多言語放送を、広告収入を柱とする民間放送として持続させるため、各局が別々の方法で姿を変えてきたのが現在の姿です。

外国語FM放送はどのような制度なのか

日本の外国語FM放送は、国外へ向けた「国際放送」ではありません。日本国内に暮らす外国人や、異なる文化、言語に関心を持つ人に向けた地上基幹放送です。

放送法施行規則では、外国語放送を「外国語による放送を通じて国際交流に資する放送」と定義しています。24時間すべての番組を外国語だけで構成する、という意味ではありません。

基幹放送普及計画では、東京都の特別区、名古屋市、大阪市、福岡市をそれぞれ中心とする区域が外国語放送の対象として位置付けられました。県単位を基本とする一般的な民放FM局とは異なり、都市と国際空港などを意識した放送区域です。

制度成立の背景には、1995年1月17日(火)の阪神・淡路大震災があります。日本語を十分に理解できない外国人に、避難、交通、給水、医療などの情報が届きにくかったことが大きな課題となりました。

interfmも、震災情報が外国語圏の人々へ十分に届かなかった反省から、東京と大阪に「有事の際に外国語放送を行うこと」を付帯条件として周波数が割り当てられたと説明しています。interfmの公式説明からも、音楽だけでなく災害時の情報提供が制度の根にあったことが分かります。

その後、次の局が開局しました。

都市圏放送局開局日現在の主な周波数・出力
大阪FM COCOLO1995年10月16日(月)76.5MHz・10kW
東京interfm1996年4月1日(月)89.7MHz・10kW
福岡LOVE FM1997年4月1日(火)76.1MHz・1kWほか
名古屋Radio-i2000年4月1日(土)79.5MHz・5kW、2010年閉局
名古屋InterFM NAGOYA/Radio NEO2014年4月1日(火)79.5MHz・5kW、2020年閉局

日本民間放送連盟の開局一覧でも、FM COCOLO、interfm、LOVE FMと、名古屋で放送を終了した2局の経過を確認できます。

interfm 外国語放送から多様性を扱う局へ

東京のinterfmは、1996年4月1日に開局しました。現在のコールサインはJODW-FM、親局は89.7MHz、出力10kWです。

開局時は76.1MHzでしたが、受信環境を改善するため、2015年に東京タワーからの89.7MHzへ移行しました。現在は横浜中継局で76.5MHzも使用しています。

経営面では、何度も資本の組み替えを経験しました。テレビ東京グループの傘下を経て、2012年6月にはテレビ東京が保有株式の90%をキノシタ・マネージメントへ譲渡しました。テレビ東京は当時、事業を映像分野へ集中する方針と、InterFMに相応の追加投資が必要になることを説明しています。テレビ東京の2012年5月30日付発表に、譲渡の経緯が記録されています。

2020年9月1日にはジャパンエフエムネットワークが木下グループから全株式を取得し、interfmはJFNの特別加盟局となりました。その後は第三者割当増資によって株主が分散しています。

公表を確認できた最新の資本構成である2024年2月1日時点では、ジャパンエフエムネットワークが28.2%、エフエム東京が11.5%、インプレスホールディングスが10.7%を保有しています。このほか、音楽、出版、広告、通信塔などに関係する企業が出資しています。InterFM897の第三者割当増資資料を見ると、特定の一社が過半数を握る開局当時とは違う経営構造になっていることが分かります。

番組内容も変化しました。2026年4月改編では、日本のアーティスト、声優、ビジネス、カルチャーを扱う日本語番組が数多く加わりました。同局の改編発表を読む限り、現在のinterfmは外国語専門局というより、音楽と文化の多様性を扱う都市型FM局に近いでしょう。

一方で、外国語放送をやめたわけではありません。英語、中国語、韓国語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語だけで構成する番組を放送しているほか、自治体情報や防災情報を多言語で伝える枠も維持しています。公式の放送局案内も、外国語放送免許と災害時の役割を現在の特徴として掲げています。

「外国語」という言葉を、使用言語だけでなく、文化、音楽、生活様式の違いまで含めた「inter」へ広げたのが現在の姿です。

FM COCOLO 日本初の外国語FM局が選んだ1社2波

大阪のFM COCOLOは、1995年10月16日に関西インターメディアによって開局しました。日本で最初に開局した外国語FM放送局です。

局名のCOCOLOには、Cooperation、Communication、Loveの意味が込められました。開局当初は外国語番組と海外文化を前面に出し、1999年12月にはinterfm、LOVE FMなどと外国語FM局ネットワーク「MegaNet」を構成しました。

しかし、独立した外国語FM局としての経営は長く続きませんでした。

2010年4月には番組制作を802メディアワークスへ委託し、音楽志向と大人向けの編成を強化します。2012年4月1日(日)には放送事業が関西インターメディアからFM802へ譲渡されました。これにより、FM802が80.2MHzと76.5MHzを運営する、全国初の民放FM「1社2波」体制が始まります。FM COCOLOの30年史に、この流れが整理されています。

事業譲渡の背景には、ラジオ広告市場の低迷と旧運営会社の経営悪化があったと当時報じられました。ただし、FM COCOLO自身の現在の沿革ページは、譲渡理由を詳しく説明していません。経営上の事情と、現在のFM802による運営評価は分けて考える必要があります。

1社2波の利点は、設備、営業、制作などの基盤を共有しながら、聴取者層を分けられることです。FM802は比較的若い世代、FM COCOLOは大人の音楽ファンを主な対象としてきました。

2025年4月からは「Lifetime Music Station」を掲げ、FM802と同じ番組を同時放送する枠も導入しています。FM802の会社概要によると、FM COCOLOは現在も76.5MHz、10kW、コールサインJOAW-FMで放送され、FM802社が2波を運用しています。

日本語の音楽番組が中心となった一方、「COCOLO Earth Colors」や「FROM OVERSEAS」など、多言語、多文化番組は残されています。外国語放送の役割を一定時間に集約し、主力となる音楽編成と共存させている形です。

LOVE FM 西鉄グループの都市メディアとして再出発

福岡のLOVE FMは、九州国際エフエムによって1997年4月1日に開局しました。現在のコールサインはJOFW-FM。福岡送信所76.1MHz、北九州中継局82.7MHz、福岡西中継局82.5MHzで放送しています。

旧運営会社には福岡県、福岡市、地元企業などが出資していました。しかし広告収入の減少や開局時からの累積損失、放送設備の更新負担が重なり、単独での事業継続が難しくなります。

地域経済媒体の当時の報道では、2010年3月期の売上高は約2億9,200万円、債務超過額は約1億7,300万円でした。データ・マックスの2010年7月21日付記事は、インターネットなど他媒体の普及による広告収入の減少と、設備更新資金を調達できない状況を伝えています。

2011年1月1日(土)、西鉄グループの天神エフエムが九州国際エフエムの放送事業を吸収分割によって承継しました。同年7月1日には、社名をラブエフエム国際放送へ変更しています。この経過は西日本鉄道の公式沿革でも確認できます。

現在のLOVE FMは、西鉄グループの広告・メディア関連事業に位置付けられています。天神の公開スタジオ、イベント、地域情報と放送を結び付けられる点は、交通、商業施設、都市開発に関わる企業グループならではの強みです。

放送内容は日本語を中心とする一般的なワイド番組や音楽番組が多くなりました。それでも同局は「10ヶ国語の多言語放送局」を掲げ、「Life in Fukuoka」で英語、韓国語、ベトナム語、ネパール語などによる生活情報を継続しています。LOVE FMの放送事業案内には、九州北部を中心とする放送区域と現在の周波数が掲載されています。

2026年度には、外国人へ生活情報を伝える福岡市の「やさしい日本語」ラジオ講座も放送しています。番組ページでは、地震、ごみ、交通、行政手続きなどを、分かりやすい日本語で伝えています。

多言語化は、言語を増やせば終わる仕事ではありません。日本語に不慣れな人へ伝わりやすい表現を使うことも、現在の外国語FM放送に必要な発想です。

愛知のRadio-iはなぜ閉局したのか

名古屋の外国語FM放送として最初に開局したのが、愛知国際放送のRadio-iです。

2000年4月1日、名古屋79.5MHz、出力5kWで放送を開始しました。トヨタ自動車、中部電力、名古屋鉄道などが設立時に出資し、日本語、英語、ポルトガル語、タガログ語など6言語による番組を制作していました。

愛知万博や中部国際空港の開港を控え、製造業で働く外国人も多い東海地方では、制度の目的と地域性がよくかみ合っているように見えました。

それでも広告収入は伸びず、開局当初から赤字が続きます。2008年には興和の完全子会社となり、人員や経費を削減しながら再建を試みましたが、減収を止められませんでした。

愛知国際放送の発表を伝えた当時の記事によると、2010年3月期までの累積赤字は28億8,000万円に達していました。同社は経営好転の可能性が乏しいと判断し、2010年9月30日(木)24:00に放送を終了しました。サカエ経済新聞の当時記事J-CASTニュースで、判断の経緯を照合できます。

Radio-iの閉局理由は比較的明確です。長期間にわたる営業赤字、広告収入の伸び悩み、累積損失によって、親会社の支援を受けても継続できなくなったためです。

外国語番組に需要がなかった、とだけ片付けるのは正確ではありません。多言語番組を制作する費用と、限られた広告市場から得られる収入が釣り合わなかったことが大きな問題でした。

InterFM NAGOYAからRadio NEOへ 2度目の79.5MHz

Radio-iの放送終了から約3年半後、名古屋の79.5MHzに再び外国語FM放送が戻りました。

2014年4月1日、東京のInterFMがInterFM NAGOYAを開局します。コールサインはJOCW-FM、出力は5kWでした。2015年10月1日(木)には局名をRadio NEOへ変更。2016年12月1日(木)には会社分割により、放送免許がInterFMから株式会社Radio NEOへ承継されました。

Radio NEOは東京の番組を流すだけでなく、名古屋での自主制作番組を増やしました。出演者や地域イベントを軸に、地元のリスナーを獲得しようとした時期もあります。

しかし2019年12月、ほとんどの自主制作番組が終了します。2020年3月31日には閉局が発表され、同年6月30日(火)12:00に放送を終えました。Musicmanの2020年4月1日付記事にも、開局から閉局までの経過が残されています。

Radio NEOについては、Radio-iほど具体的な閉局理由が公式に説明されていません。閉局告知は放送終了の事実を伝える内容にとどまり、損失額やスポンサー撤退などの詳細は公表されませんでした。

地元放送を記録した専門サイトによると、株式会社Radio NEOは2019年3月期に835万円の利益を計上しています。その後に自主制作番組が急減したため、単純に「赤字が続いたから閉局した」と断定することはできません。TOPPY NETの記録からも、最終判断に至る全容が外部からは見えにくかったことが分かります。

現在確認できる資料から書けるのは、親会社を含む経営方針の変更と事業継続判断が閉局に影響したとみられること、詳しい理由は公式に発表されていないことまでです。

同じ79.5MHzの外国語FM放送が2回続けて終了した事実は重いものです。ただし、Radio-iとRadio NEOでは、資本、番組制作体制、広告市場、開局時期が異なります。二つを同じ失敗として扱うべきではありません。

なぜ外国語だけの放送ではなくなったのか

開局時の理念と現在の番組表を比べると、「一般的なFM局に近づいた」と感じるのは自然です。

各局の沿革、資本変更、番組改編、閉局事例から、その理由を整理すると次のようになります。ここからは公表資料を踏まえた分析です。

第一に、外国語ごとに聴取者が分かれます。英語番組を聴く人と、ポルトガル語やベトナム語の生活情報を必要とする人は必ずしも重なりません。限られた放送時間を多くの言語へ分けるほど、一番組当たりの聴取者は少なくなります。

第二に、多言語番組は制作負担が大きくなります。言語能力のある出演者、翻訳、原稿確認、行政用語や防災用語の監修が必要です。誤訳が人命や生活に影響する情報では、機械翻訳だけに任せることもできません。

第三に、外国語による日常情報は、インターネットやSNSと競合します。必要な言語を必要な時間に選べる配信サービスに対し、決まった時間に同じ内容を一斉送信するラジオは不利な場面があります。

第四に、民放局は広告収入を確保しなければなりません。日本語の音楽番組、著名な出演者、地域イベントなどで幅広い聴取者を集め、その収益と制作基盤を多言語放送の維持にもつなげる必要があります。

interfmはJFNとの連携と分散した資本構成、FM COCOLOはFM802との1社2波、LOVE FMは西鉄グループの都市、商業、イベント事業との連携を選びました。方法は違いますが、いずれも外国語FM放送だけを独立した事業として抱え込まない仕組みです。

放送内容の変化は、開局理念を捨てた結果というより、理念を残すための現実的な再設計と見るほうが実態に近いと思います。

在留外国人400万人時代に残る役割

出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人でした。前年末から35万6,418人、率にして9.5%増え、初めて400万人を超えています。2026年3月27日付の公表資料に基づく数値です。

外国語FM放送が制度化された1995年より、多言語で情報を伝える必要性はむしろ高まっています。ただし、必要とされる言語は以前より多様です。数種類の外国語番組を並べるだけでは、すべての人をカバーできません。

これから必要になるのは、地上波FMとデジタル配信の役割分担です。

平常時は、放送した生活情報をウェブ記事、ポッドキャスト、SNS、文字情報として残す。言語ごとに検索できるようにする。緊急時には、停電や通信回線の混雑時にも一斉に届けられるFM放送を情報の背骨として使う。自治体や国際交流団体と連携し、地震、津波、避難所、医療などの定型文を事前に準備しておくことも重要です。

ラジオは受信機さえ動けば、不特定多数へ同時に情報を送れます。反面、受信機を持たない人や、対象番組の放送時刻を知らない人には届きません。FMだけ、インターネットだけと決めるのではなく、双方をつなぐ設計が欠かせません。

LOVE FMが取り組む「やさしい日本語」も、その一つです。外国語へ翻訳するだけでなく、短い文、平易な語彙、具体的な指示を使うことで、国籍や母語の違いを越えて情報を伝えられます。

外国語FM放送の今は、変質ではなく役割の組み直し

1990年代に始まった外国語FM放送は、開局時の姿のまま残った局が一つもありません。

interfmは資本関係を何度も変え、JFNの特別加盟局となりました。FM COCOLOは旧運営会社からFM802へ移り、1社2波の一方を担っています。LOVE FMは旧会社の経営難を経て、西鉄グループの都市型メディアとして再出発しました。

名古屋ではRadio-iとRadio NEOが放送を終了し、制度上の対象都市でありながら外国語FM放送が存在しない状態が続いています。

確かに、現在の3局は外国語だけを流す局ではありません。しかし、多言語による生活情報、災害情報、異なる文化や音楽を紹介する番組は残っています。

大切なのは、番組の何割が外国語かという数字だけではないはずです。緊急時に必要な情報を本当に届けられるか。平常時から外国人住民との接点を築けているか。公共的な役割を支える経営基盤を維持できるか。

外国語FM放送の約30年は、理想だけでは放送を継続できないことを示しました。同時に、運営会社や編成を変えてでも電波を残す価値が、今も失われていないことを伝えています。

本日も最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました!
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