第1回ホクリク・デジコミーティング出張編開催のお知らせ

田園にそびえる100mのAM送信塔〜NHK高田ラジオ中継放送所を訪ねて〜

アマチュア無線局 JF9OYU/ライセンスフリー無線局 いしかわJK946 です。いつもブログをお読みいただきまして、心より感謝申し上げます。

さて、2026年8月1日(土)、新潟県上越市への日帰り旅行の途中で、以前から気になっていた「NHK高田ラジオ中継放送所」を訪れました。

上越市藤塚の一帯には、見渡す限りの水田が広がっています。その中でひときわ目を引くのが、赤と白に塗り分けられた細長い送信塔です。塔の最上部には、まるで巨大な車輪、あるいはクモの巣のようにも見える円形の構造物が取り付けられています。

テレビやFMラジオの送信所では、鉄塔の上部に送信アンテナが取り付けられていることが一般的です。しかし、AMラジオの送信所では、塔そのものをアンテナとして使用することがあります。

NHK高田ラジオ中継放送所も、まさにその構造を目の前で観察できる施設でした。

※写真はすべて2026年8月1日に公道上から撮影しています。放送所の敷地内には立ち入っていません。

上越市の田園地帯にそびえるNHK高田ラジオ中継放送所。送信塔は局舎の屋上から立ち上がっています。

NHK高田ラジオ中継放送所とは

NHK高田ラジオ中継放送所は、新潟県上越市藤塚に設けられているNHKの中波、いわゆるAMラジオの送信施設です。新潟市方面にあるNHK新潟放送局の親局だけでは十分な電波を届けにくい上越地方に向け、地域のラジオ放送を支えてきました。

2026年8月1日現在、ここからは792kHz、空中線電力1kWで「NHK AM」が放送されています。新潟県が公表している県内ラジオ周波数一覧にも、高田局の周波数として792kHzが掲載されています。

放送波周波数空中線電力2026年8月現在
NHK AM(旧ラジオ第1)792kHz1kW放送中
旧NHKラジオ第21359kHz100W2026年3月29日深夜に放送終了

これまで高田ラジオ中継放送所では、ラジオ第1の792kHzとラジオ第2の1359kHzが、同じ送信塔を共用して放送されていました。

しかし、NHKのラジオ放送は2026年3月30日から「NHK AM」と「NHK FM」の2波に再編され、ラジオ第2は同年3月29日深夜をもって放送を終了しました。したがって、今回訪れたのは、長年放送されてきた1359kHzの電波が止まってから約4か月後ということになります。

全国のラジオ放送にとって大きな節目となった年に、この送信所を記録できたことにも意味があったように思います。

広大な水田と山並みの間に立つ送信塔。周囲には送電線の鉄塔も多く、電気と電波を支える設備が同じ風景の中に並んでいます。

約100mの送信塔そのものがアンテナ

NHKが発注したとされる補修工事の案件名では、この送信塔は「局舎屋上支線式100m円管柱」と表記されています。局舎の屋上を起点として、高さ約100mの円管柱が立ち上がり、複数段の支線によって支えられています。

792kHzの電波の波長は約379mです。その4分の1波長は約95mになるため、約100mという塔の高さは、792kHzの中波送信アンテナとして理にかなった寸法であることが分かります。

AMラジオの送信塔は、塔の上に別のアンテナを載せているのではなく、塔体そのものに高周波電力を加えて電波を放射します。そのため、塔の根元は大地や局舎から電気的に絶縁され、送信周波数に合わせるための整合設備と接続されます。

外から見ただけでは、局舎内部に設置されている送信機や整合回路の詳細までは確認できません。それでも、送信塔の根元にある大型の碍子や絶縁構造から、一般的な鉄塔とは異なるAM送信アンテナ特有の構成を観察できます。

送信塔の根元部分。局舎との間に設けられた絶縁構造や、円環状の設備を確認できます。

写真に写る円環状の設備は、塔体側に設置された航空障害灯などへ電力を供給しながら、送信する高周波を電源側へ流さないための設備とみられます。AM送信所では、この目的で「オースチン変圧器」と呼ばれる装置が使用されることがあります。

ただし、設備の正確な型式や現在の運用方法については、外観だけでは判断できません。

巨大な車輪のような「頂冠」

NHK高田ラジオ中継放送所を象徴する設備が、送信塔の最上部に取り付けられた円形の「頂冠」です。

送信塔の真下から見上げた頂冠。外周のリングと放射状に延びる導体が幾何学模様を描いています。

頂冠は、英語で「トップハット」や「キャパシティハット」と呼ばれることがある構造です。送信塔の上部に導体を広げることで、アンテナの電気的な長さや電流分布、給電点のインピーダンスなどを調整します。

高田局の頂冠は外周の大きなリングと、その内側に張り巡らされた複数の導体で構成されています。地上から眺めると小さく見えますが、送信塔全体の大きさを考えると、実際には相当な直径があるはずです。

見る角度によって形の印象が変わる頂冠。送信塔の機能美を感じさせる部分です。

電波を効率よく放射するために設計された設備ですが、その姿はどこか機械的な造形作品のようにも見えます。遠くからでもNHK高田ラジオ中継放送所だと分かる、特徴的なシンボルです。

送信塔を支える支線と碍子

高さ約100mの細長い円管柱を安定して支えるため、送信塔からは複数の方向へ支線が張られています。支線は数段に分かれ、地上に設けられた大きなコンクリート製の支線基礎に固定されています。

水田の中に設けられた支線の固定部分。遠くには上越地方の山並みが広がります。

写真をよく見ると、支線の途中や末端に多くの碍子が挿入されていることが分かります。

塔体そのものがアンテナとして高周波電力を帯びるため、支線を単なる金属線のまま接続すると、支線にも高周波電流が流れたり、意図しない長さのアンテナとして動作したりする可能性があります。そこで、碍子によって支線を電気的に分割し、送信アンテナの特性や放射パターンへ与える影響を抑えています。

支線基礎から送信塔へ延びる複数の支線。碍子を含めた構成を間近に観察できます。

周辺には一般の電力会社が使用する大規模な送電線も通っています。放送用の送信塔から延びる支線と送電線が何重にも重なって見える風景は、電波や電気設備に興味がある人にとって、なかなか見応えがあります。

番組を送信所へ届ける伝送設備

送信塔の中ほどには、平らな円形をしたマイクロ波用とみられるアンテナが取り付けられています。

送信塔に取り付けられたプレート型のパラボラアンテナ。

既存の送信所資料では、高田デジタルテレビ中継局側から番組信号を受信するためのアンテナとして紹介されています。

ラジオ放送所では、スタジオで制作された番組を何らかの方法で送信所まで届けなければなりません。このスタジオと送信所を結ぶ伝送回線は、一般にSTL(Studio to Transmitter Link)と呼ばれます。親局や別の中継拠点を経由する場合は、TTL(Transmitter to Transmitter Link)という名称が使われることもあります。

アンテナが向いている先や使用周波数、現在の伝送ルートについては、外観だけで断定することはできません。しかし、ラジオ放送が「送信機とアンテナだけ」で成り立っているのではなく、番組を確実に送り届ける伝送設備も必要であることが分かります。

予備受信・監視用とみられるアンテナ

局舎の近くには、送信塔とは別に細いアンテナ柱が立っています。柱の上部には円形のループアンテナが上下に2基、その下には八木アンテナが取り付けられていました。

局舎の横に設置された2基のループアンテナと八木アンテナ。

既存資料では、中波放送の予備受信や放送内容の監視に使用する設備と推定されています。ただし、2026年3月のラジオ再編後も同じ用途で運用されているのか、バックアップ設備として残されているのかは確認できませんでした。

放送所では、自局から電波が正常に出ているか、番組音声に異常がないかを監視する必要があります。また、番組伝送回線に障害が発生した場合に備え、別の放送波を受信する設備が用意されることもあります。

主役となる100mの送信塔だけでなく、こうした小さなアンテナにも、それぞれ放送を維持するための役割があるのでしょう。

田園の中に残る旧NHKロゴ

局舎は、クリーム色の外壁を持つ平屋建ての建物です。その外壁には、現在は使われていない、3つの卵を組み合わせたNHKの旧ロゴが残されています。

局舎の外壁に残る旧NHKロゴ。近年の放送施設では見かける機会が少なくなりました。

「三つのたまご」と呼ばれたロゴは、NHKの放送開始70周年にあたる1995年に導入され、2020年まで使用されました。新しい生命、無限の可能性、人々が支え合う共生社会などを表現したデザインとされています。

年月を重ねた局舎の外壁に、この旧ロゴが手描きのような姿で残っているところにも、長く使われてきた放送施設ならではの味わいがあります。

巨大な送信塔や頂冠といった技術的な設備に目を奪われがちですが、このロゴも高田ラジオ中継放送所で特に印象に残ったものの一つです。

高田におけるNHKラジオ放送の歴史

公開されている沿革資料によると、高田におけるNHKのラジオ放送は、1941年12月31日に開設された高田臨時放送所までさかのぼります。戦時中の電波管制に伴って設けられた施設で、終戦後の1945年には高田中継放送所へ改称されました。その施設は1950年にいったん廃止されています。

現在につながるNHK高田放送局は、1953年5月2日にラジオ第1の放送を開始しました。ラジオ第2は1956年12月15日に加わり、かつてはラジオ第1に「JOQX」、ラジオ第2に「JOQV」という独自の呼出符号が割り当てられていました。これらの呼出符号は1967年11月1日に廃止されています。

そして2026年3月29日深夜、ラジオ第2の放送が終了しました。

高田ラジオ中継放送所は、戦前から続く地域放送の歴史、戦後のラジオ普及、2波体制の時代、そして2026年のラジオ再編まで、NHKラジオの変化を見守ってきた施設といえます。

地域の暮らしと防災を支える792kHz

インターネットを通じて全国のラジオ番組を聞ける時代になりましたが、放送電波が持つ役割は失われていません。

AMラジオは地表に沿って伝わる地表波を利用でき、比較的広い範囲へ電波を届けられます。山に囲まれた地域であっても、VHF帯やUHF帯より回り込みが期待できることがあります。

また、ラジオ受信機は乾電池で動くものが多く、停電や通信回線の混雑が発生した災害時にも情報を受け取れる可能性があります。その入口となる792kHzの電波を、上越地方へ送り続けているのが、この高田ラジオ中継放送所です。

普段、私たちは受信機から流れる音声を何気なく聞いています。しかし、その音声の背後には、送信機、伝送回線、整合設備、アンテナ、電源設備、監視設備、そして日常的な保守に携わる人たちが存在します。

まとめ

上越市の田園地帯に立つNHK高田ラジオ中継放送所は、派手な観光施設ではありません。敷地内へ入ることもできず、局舎の内部を見学できるわけでもありません。

それでも、約100mの円管柱、巨大な頂冠、碍子で分割された支線、プレート型パラボラアンテナ、そして局舎に残る旧NHKロゴなど、外から観察できるだけでも多くの見どころがありました。

特に印象的だったのは、人工的で巨大な送信設備が、青々とした水田や上越の山並みの中に溶け込んでいる風景です。長年そこに立ち続けてきたからこそ、今では地域の景観の一部になっているようにも感じられました。

2026年はNHKラジオ第2が放送を終え、NHKのラジオ放送が2波へ再編された節目の年です。その直後に高田ラジオ中継放送所を訪れ、現在の姿を写真として残せたことは、ラジオや放送設備を愛好する者として貴重な経験となりました。

これからラジオの聞かれ方が変化しても、地域へ確実に情報を届ける送信所の重要性は変わりません。次に上越地方で792kHzを受信するときは、水田の中にそびえるこの送信塔の姿を思い出すことになりそうです。

参考資料

放送周波数および運用状況は2026年8月1日現在の情報です。外観から確認できない設備の構成や用途については断定を避けています。

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